白熱 サイドB/佐々宝砂
 
の内面は 白濁する海に浮遊する透明なゼラチン状のクラゲに過ぎない そんなものは犬にくれてやってよい なんならあなたにやってもよい しかし一方俺の身体は間違いなくここにあり それはかなりどうしようもない代物ではあるが 機械的な意味ではまだきちんと機能する あなたが俺の身体をいかように想像しようとも自由だが 俺の身体は俺のものでありあなたの意のままにはならない だが俺の意のままにもならない 俺の身体を操るのは白熱である 絶対的な白熱である 白熱はやがて俺を死に至らしめるだろう 俺は断崖絶壁に立って白熱の淵を見下ろし 身震いしながら 白熱に俺の身体を差し出すだろう しかし時はまだ来ない だから俺はまだ死を歌うことができない 白熱が命ずる オードを歌えと命ずる 俺自身の愛ではなく 焼け野原への絶望ではなく 白熱する輝かしい冷徹へのオードを

  グループ"白熱。"
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