黙祷/木屋 亞万
黙祷を捧げる
命が大量に羽ばたいた日々
白い鳩は真っ黒な烏に
焦げた
世界一大きな毒キノコが
街二つを飲み込んだ
後
雨を降らした
見たくも無い
地平線が見えただろう
朝
黒煙と灰
火の踊り続ける街
人の燃える中
歩き続けた者たちを
思う
雨が濡らす石に
焼き付けられた人
弁当箱を開けたまま
廃墟の中で動かぬ人
人ならぬ人
火となる人
耳に届かない苦痛
時代の壁が埋めていく
硝子の向こう
言葉とともに
黙祷を捧げる
入道雲に縁取られた
真っ青な空の下
どうか安らかに
眠れているのだろうか
忘れてはならない
忘れてはいけないのに
記憶の中に烏はいない
類人が人類になってから今まで
争いが消えたことなど無いのに
烏を忘れて眠る日々
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