黙祷/木屋 亞万
 
黙祷を捧げる
命が大量に羽ばたいた日々
白い鳩は真っ黒な烏に
焦げた

世界一大きな毒キノコが
街二つを飲み込んだ

雨を降らした

見たくも無い
地平線が見えただろう

黒煙と灰
火の踊り続ける街
人の燃える中
歩き続けた者たちを
思う

雨が濡らす石に
焼き付けられた人
弁当箱を開けたまま
廃墟の中で動かぬ人
人ならぬ人
火となる人
耳に届かない苦痛
時代の壁が埋めていく
硝子の向こう
言葉とともに

黙祷を捧げる
入道雲に縁取られた
真っ青な空の下
どうか安らかに
眠れているのだろうか

忘れてはならない
忘れてはいけないのに
記憶の中に烏はいない

類人が人類になってから今まで
争いが消えたことなど無いのに
烏を忘れて眠る日々

   グループ"象徴は雨"
   Point(2)