狸囃子 / 夏休みの想い出/beebee
 




夏休みにはいつも母の実家に帰って、
おばあちゃんのおとぎ話を聞いた。
従兄弟達と一緒に横になって
おきまりの昔話を聞いた。
遠くに盆踊りの音楽が聞えてきた。

「狸囃子や」

従兄弟の兄ちゃんが叫んだ。
みんなで母屋の前の道に出た。
向かい山のあたりで灯りがチラチラと揺れていた。
賑やかな太鼓囃子と盆踊りの音楽が聞えてきた。

「ほんまやねぇ」

同い年の従兄弟の子が言った。

「なにぃ」

と僕が言うと、
向かい山には村は無いと言う。

「あれは空気の屈折や」

いっちゃん大きい兄ちゃんが言った。
灯りは見えるけど蜃気楼だと言う。
すぐそこの手が届きそうな近くの山に、
確かな賑わいを感じながら、
ぼくたちはずっと立って見ていた。


*いっちゃん=一番



   グループ"散文詩"
   Point(12)