ヤゴの飼育/西日 茜
 
プール清掃の前 ヤゴ捕り大会があって
捕まったヤゴたちは巨大なペトリ皿に移される
ヤゴはそれぞれの教室に置かれ、トンボになるまで観察される

子どもたちが最初に目にしたのは、なんと共食いだった
餌を用意し忘れたので
お腹が空いたヤゴは目の前の仲間を食べる

そのショッキングなシーンに飼育係さんは言葉を失った
餌のイトミミズと浮き草が届くまで
残酷なヤゴの生態を観察しなければならないなんて…

食うか食われるかの闘いを生存競争というが
生きた餌を喰らう様子もまた生々しく
かたまってうねる赤は跡形も無く食べられて行く

学校の飼育は金魚だけじゃないから
壊れやすい神経を持つ子は飼育係はおすすめできない

ピンセットでイトミミズをつまみ
ワイワイやってる子たちの隅っこで
言葉を無くしワナワナ震える子がいたら
放って置いていいものか

いいわけがないだろうとわたくしは考える
人の成長のステージは様々なんだよ





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