カモノハシのパンセ8/佐々宝砂
ろん器用じゃないけれど。
***
私は過去の私を抹殺しないで残しておく。
それは過去の私に過ぎないけれど。
***
たとえば私には嫉妬がわからない。嫉妬するような状況が未経験かというと、そうでもない。でもそういうとき私が感じるのは疎外感で、軽いやきもちですらなかった。嫉妬に怒り狂う男女を目の前でみた。全然理解できなかった。どうもこれは欠損のような気がするのだ。憎しみも嫉妬もわからないあんたには、愛もわかりゃしない、と氷水をぶっかけられて罵られたこともあったが、困ったなあと思うだけだった。普通ならはっきり憎しみを抱いてもおかしくない状況に陥ったこともあるが、これは大昔なの
[次のページ]
前 次 グループ"カモノハシのパンセ"
編 削 Point(1)