星よりとおく/たりぽん(大理 奔)
窓の外は少し北風の吹く夕暮れで
これから南極老人星を見ようと
大きなパラボラのあいだを抜けて
昔、友をなくした修行者が
涙で掘り抜いた文字があるという
岩屋のあるこだかい丘に
向かおうとしていた
これからであれば
ちょうど星の頃に着くだろうと
夕食かわりのおにぎりを差し出しながら
宿のおやじが言う
南の空のずっと低い場所にある
(その星を見ると長生きができるという)
みんなは必死で星を求めたけど
私はあなたの横顔ばかりみていた
そらが宇宙を映し出す鏡になって
絶対に手の届かない宝石をちりばめても
気が付かなかった
あなたは
ばらまかれたあの星の周りを巡る
違う惑星に住んでいることを
ふと、振り返ると
陽が沈んでから
ずっと同じ場所で見つめている
ひとつ星の明かりの下に
自分の影を踏んでいた
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