星よりとおく/たりぽん(大理 奔)
 
窓の外は少し北風の吹く夕暮れで
これから南極老人星を見ようと
大きなパラボラのあいだを抜けて
昔、友をなくした修行者が
涙で掘り抜いた文字があるという
岩屋のあるこだかい丘に
向かおうとしていた

これからであれば
ちょうど星の頃に着くだろうと
夕食かわりのおにぎりを差し出しながら
宿のおやじが言う

南の空のずっと低い場所にある
(その星を見ると長生きができるという)
みんなは必死で星を求めたけど
私はあなたの横顔ばかりみていた

  そらが宇宙を映し出す鏡になって
  絶対に手の届かない宝石をちりばめても
  気が付かなかった
  あなたは
  ばらまかれたあの星の周りを巡る
  違う惑星に住んでいることを

ふと、振り返ると
陽が沈んでから
ずっと同じ場所で見つめている
ひとつ星の明かりの下に
自分の影を踏んでいた
  グループ"私的星座盤"
   Point(7)