穴の唄/桜 葉一
(おとしあな)
落とし穴を作った
きっと誰かが落ちるだろうと
草叢に隠れて見張った
1時間経っても2時間たっても
誰も落ちやしなくて
なんだか虚しくなった
落とし穴の場所に戻ってそれを埋める
結局残ったのは
心にぽっかりと空いた穴
(ぽけっと)
ポケットに
穴が空いてるなんて
気づかないものだから
サイフはどこかへ落としてしまった
繋いでいたはずの
君の右手と一緒に
( )
(あん・どーなつ)
穴の無いドーナツ
君は
こんなもの食えないよ
と笑う
どうしてって聞くと
だって穴が無いんだもん
僕は
そうだね
と笑って
君のドーナツの上に僕のドーナツを重ねる
お皿の上にまんまるお月様
2つ
少しだけ僕達の距離が縮まった気がした
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