霞む影/松本 卓也
屋上を流れる雲を見ていると
愚痴ばかりが口をついてくる
誰に聞かせたいわけでもない
一人の気楽さは知っているつもり
チリチリと音を立てる煙草が
すり減らして行くのは時間だけ
何処かで置いてけぼりな気持との
距離が縮んでいく訳でもない
そういえばそろそろ
アイツから結婚式の招待状が
届く頃じゃなかったっけな?
知らぬ間に築かれていった関係が
また知らぬ所で別の関係を作っていく
嬉しくて 少し 寂しくて
いつも一人立つ影を振り返り
思い出す街は何処まで行っても灰色
黄昏に霞んだ幻を見つけては
失敗と後悔で塗りつぶしていく
名付けるのはきっと簡単で
分析するのは無駄な労力だ
けれど敢えて口にしたくなるのは
夕陽がビルに隠れてしまったせい
終わりを告げるチャイムと
残った仕事を重ねるデスク
何処で決着を迎えて
何から始めるかが委ねられ
全てがこうであったら
どんなにも楽で 味気ないのか
過ぎる思考に猶予を感じる
まだ暫くは一人で良い
もう暫くは一人が良い
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