散歩道/
夕凪ここあ
のに
思い出という文字で括られるそれはいつも悲しい
あなたの手を不安という力で触れると
優しさで握り返してくれる
あなたの瞼の裏には
何か寂しさに似たものが眠っている
「あ」がうまく発音できないまま
何でもない真似事をして
あなたの温もりにそのうち忘れていく悪い夢
頭上で一筋の飛行機雲が空を分断していく
裸のままの木の枝に彩りを抱いた蕾が
眠りから覚めるのを今か今かと待っている
散歩道で
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