【糧】/穢土
波音に耳を澄まし、東の最果てを想ふ
異国で知る祖国に手紙を書き連ね
今日も過客の群れへ夕暮れと共に埋没してゆく
隣の爺さんや婆さんはもういないかも知れない
悪餓鬼も汚らしい酒屋も、すっかり変身しているかも知れない
凱旋門のナポレオンはフランスの虜
わたしが帰国しても祖国は振り向いてくれない
時の流れと共にすべては変容し忘れ去られてゆく
濾過装置にこされる不純物のように、変身願望を抱いて
今日も故郷から遠ざかる
浦島太郎が竜宮城から戻ったとき
わたしはわたしの御伽噺を見たかのように
時計の針と雲の流れに驚愕して
細長いロケット花火に未練を詰めて飛ばす
ほらっ 夜空で破裂するその美しさ
焦ることなんかない
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