雪あかり/落合朱美
夜がほの蒼いのは
雪が舞っているから
すこし窓を開けて
吐息が白く夜気に放たれ
雪と交わるのをながめる
手を延ばせば舞いおりて
けれどその冷たさは
触れるまもなく掌に溶ける
いつかの雪の夜に
あなたと歩いた
かじかんだ手をつなぐこともなく
ただ肩を並べて歩きつづけた
わたしよりもすこし高い位置で
吐き出される息の白さと
ときおり触れた肩のぬくもり
それだけがまるで想い出みたいに
それしか思い出せない記憶みたいに
真冬の空に浮かぶ幻燈みたいに
ああ、雪が
と、言いかけて
その先の言葉を言えなかったのは
雪あかりの中であなたの瞳を
まっすぐに見てしまったから
ほの蒼い夜を
わたしはすこし恨んで
言葉は白い吐息にかわった
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