涙と花吹雪/クラウン
理由もなく
ただ
流れてくる涙を
流れてくるがまま
流す
信号待ちが
もどかしい
ずっと
立ち止まらずに
歩いていたいのに
止まらなければならないのが
もどかしい
涙は
止められないのに
その時
はらり、と散った
花びらが
私の涙を
掠めていった
そう思っていたのに
散ったと思った花びらは
彼が上から
降らせていたもので
涙をぬぐってくれたのは
彼だった
私が驚くと
彼は
嬉しそうに笑って
涙、止められないなら
僕が止めてあげるから
そう言って
私の頭の上に
花吹雪を
降らせてくれた
これからの人生への
餞別だよ、と言って。
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