式典/霜天
強く願ったはずのことを
もう、忘れてしまっている
一年前の自分たちを窓から次々に捨てると
とても身軽になれることを知った
ポケットを裏返しても、もう
何も出てこない
ささくれがどこかに引っかかってしまった時の
小さな痛みが過ぎると
からっぽの優しさが部屋に満たされて
いつでも溺れることが出来る
明日の朝には
壁に窓を描こう
その向こうでは
誰にも触れられず消えていくことなど
もうありませんように、と
願いながら
そしてドアノブに手を伸ばすと
小さな電気が走る
まだここにある痛みの向こうでは
大勢の人たちが
西へと行進を続けている
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