格好良い大人にはなれなかったけれど/松本 卓也
 
今の瞬間を繰り返しながら
生き延びているだけのこの姿は
その小さな四つの瞳に
どんな風に映っていたのかな

幼い頃から何度も摩り替えつつ
一つを否定して一つを肯定して
いつしか永らえるだけが目的となって
意味を問う事さえ置き去りにしてきた

むずがるでもなく泣くでもなく
はじめて見る顔をじっと見つめて
小さな指をぐっと伸ばし
この頬に触れようとする

少し 涙が出そうだ
何だか慰められているようで
何だか励まされているようで

こんな大人になるんじゃない
そんな事が言えるほど
碌でもない生き方でも無く

背中を見せる役目じゃないけれど
今の俺や兄貴達にとってそうあるように
君達の思い出の中で恥ずかしくない
そんな存在であればと 願う



なぁ兄貴
何でこの子ら 急に笑い出したんだ
俺の顔がそんなに可笑しいのかな?

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