子宮の中で/なかがわひろか
あの日子宮に辿り着いた時
私は多くの仲間を蹴落として
一人の女を犯した
彼女はとてもきれいな
色をしていたから
私は穢したくて
嫉妬していたのだろう
彼女と一つになった時
私は少し後悔した
時が経てば私はより
大きくなるだろう
そして混ざり合った遺伝子を
私はそのうちコントロールし切れなくなる
その時私は
私でいられるのだろうか
全く違う顔を持ち
全く違う言葉を遣い
全く違う女を愛すのだろうか
仲間はもう誰も来ない
羞恥を持ったこの女は
全ての自由を制御した
諦めにも似た
受け入れをして
私はだんだん彼女の環境に
支配される
猛々しい本能を持った昔の私は
もうそこにはいない
いつしかここから抜け出した時
私は私ではないのだろう
その時私は
一体誰であろうか
(「子宮の中で」)
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