癖のある男女/吉田ぐんじょう
 


友人に
擬態する癖のある女がいる

よく家の中で
かくれんぼうをする
二人で
わたしが鬼で

十数えて振り返ると
家の中はしいんとして
空気がうす青い
百年前からこうして
一人で暮らしていたような気持ちになる

何時もそこで
たまらなくなって
わたしは
わあわあ泣き出してしまう

すると友人は
二つ並んだ
蛍光灯の
柱時計の
ごみ箱の
ありとあらゆるものの
どちらか片方から
むくむくと起き上がって
黙って鼻紙で涙を拭いてくれる
馬鹿だねえ
と言いながら
ばつが悪そうな顔をしながら

友人の鼻紙は
陽射しとミルクのにおいがし
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