みどりうた/木立 悟
わたる日を得た
静かな笑みで
水は幾度もひらいては
土をひとつ はたりと照らす
色や音をほどきながら
羽は線に飛び去ってゆく
細く軽くなりながら
やがて羽ではなくなりながら
午後へ狭まる路があり
尾を持つものはまぶしげに起き
封の切られたおくりもの
ひとつの影にひとつ置かれる
うたを撒く小さな空から
うたがなくなるときが来るまで
降るものは皆みどりに降り
寝がえりをうつ背からこぼれる
隠れていた声はひとつ唱い
頬を染めてふたたび隠れる
みどりは重なり 深くなり
波紋とともに海へ向かう
低くひろがる空の花を
雨と風は流れゆく
たくさんの色の濡れた手が
花をささえて唱い笑う
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