位置についている/霜天
位置についている
足跡を構えている
辿る順路は地図の上に滞りなく
手を繋いだ人を添えて迷い込んでいる
踵から踏み込む、街
命の位置について、いる
まだ、僕らが素材だった頃
教科書の奥で間違うことに気付いては
呼吸を読まれないように、深く沈んだ帽子の影で
心音を心音と認めずに
ただ、ガードレールの曲線に沿って
目隠し鬼は呼ばれるほうへ
深く、深く歩いていった
誰かを呼ぶ声が聞こえる
風切る音、が聞こえる
金切り声、が聞こえる
線につく
道が、開けている
初めての夢に見たのは
とても好きだった人、の瞳
確かなことなのに、名前が溶けている
不確かな夢を混ぜ合わせると
輪郭が薄れて
いつか、ひとつになれる
位置についている
命の浮き沈む線の上にいる
遠く呼ぶ声を確かに聞けば
今も見ている
徒桜
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