薄幸そうな女/たもつ
薄幸そうな女が歩いていく
カツカツカツカツ通りを歩いていく
お気に入りの赤いコートを着て
カツカツカツカツとブーツの音を響かせて
薄幸そうな女が歩いていく
背筋をピンと伸ばし
長い髪を手で掻き分け
早足で通りを
カツカツカツカツ歩いていく
そんなに急いだところで薄幸なのに
薄幸だというのに
僕は喫茶店のいつもの窓際
モーニングのコーヒーを飲むのに必要な
5ミリグラムのミルクを正確に計量しようと
目の高さまでスプーンを持ってくる
薄幸そうな女は薄幸だから
きっと駅前の段差で蹴躓く
僕がむず痒いのは
6ミリグラムのミルクのせい
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