羽化/umineko
 
    僕が強い念を送ると
    雑踏がぴたりと止まり
    鳥も雲も自動車も
    お芝居よろしく固まって

    その無動の世界から
    ひとり歩き出す僕は
    君の前で立ち止まり
    しげしげと君を見つめる

    目を見開いたまま動かない君
    ショルダーをきゅっとつかんでる君
    君のすべてが僕の自由で
    しかも君はそれを知らない

    君が自由になる
    という 胸の高鳴り
    君を自由にできる
    という 残虐な笑み

    つまり僕が欲しいのは
    君の過去でも身体でもなく
    君を自由にできるという位置

    他の誰でもない君を
    支配すること

    そうだね?

    僕は
    世界を再び溶かす
    呪文を忘れてしまったように
    やわらかな
    君の輪郭を眺めている


    今日はとてもひどく雨が降っているので
    透明人間について考えることにした
     
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