灯火ときままな風/九谷夏紀
うなこの灯火を
この便りを燃料にして
いつまでも
いつまでも
守りたい。
(外には出ないよ)
(なにもしないよ)
(動いたら火が消えちゃうもん)
灯火につきっきりとなって私は4日を過ごした。
あたたかな家の中から窓の外の寒空を眺めて
風がまた便りを運んでくるのを待った。
4日間とも風が強くて
ごうごうという音と共に窓ガラスを何度も揺らして
はっとした。
(便りが届いたかも)
(いま外に出ればこの灯火とお別れできる)
11月に生まれたこの灯火は
大火とならない限りは
あるいは木の枝をくべてくれる人がいない限りは
消えてしまう宿命にある。
けれども
外には未来と希望があふれてるよ。
その希望に消されましょう。
どうしてもこの灯火を消したくなくなったら
口にふくむよ。
やけどしたってかまわない。
風よ。
便りをありがとう。
君は風だから
奔放なのは仕方がないね。
今度はなにを運んでくれるの?
私は君が好きよ。
またおいで。
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