みずへらし/なかがわひろか
 

寒くなると
雲は雪となって
地面を白く染め上げた

緑は季節ごとにいろんな色に染まり
人々は毎日おいしい水を取り入れて
いつも体はきれいになった

誰もそれほど
怒りっぽくなくなった
遠足の前の日には
照る照る坊主にお祈りすればよかった

みずへらしは
どんどん痩せていった
けれど何も飲まなかったし
何も食べなかった

みずへらしは
とてもとても
小さくなった

誰の目にも止まらないほど
小さく小さくなった

みずへらしは
みずへらしは

けれど消えることはなかった
何の力も残ってはいなかったけれど

みずへらしは
一人で
たった一人で
きっと今

泣いているだろう

悲しい悲しい
みずへらし

だけど愛しい
みずへらし

(「みずへらし」)
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