大人になる/さくらほ
 
勤める店のある街には
空は上にしかない
疲れた街路樹から
遥かに上
高く遠く硬い

季節は駆け足で過ぎてゆく
日々は戻らぬから
私は大人にしかなれず
この街が似合う年になって
この街が似合わぬ年になってゆく

カツカツと音を立てて
早足で歩けるようになったのは
人の波からはじき出されぬように
前だけへ進んできたから
声を出さずにニコリと微笑むのが上手になったのは
正面からぶつかってばかりでは
傷だらけになってしまうことに気づいたから

いつごろからだろうか
自分の青春時代を
浅い夢だったかのように感じ始めたのは
あんなにも抱えきれぬものを抱えながら走
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