剥離/umineko
 

    乾き始めたかさぶたを
    ゆっくりと剥ぐ

    透明な液
    小さな痛み
    そして残虐な
    笑み

    数日後
    私は母親に
    左手を差し出した

    お兄ちゃんに
    つけられた傷
    こんなになった

    その時
    母がどんな表情だったか
    私はうまく思い出せない
    そのあと
    兄と
    どうなったのか

    たぶん
    兄も母も
    誰も覚えていないだろうし
    傷なんてもう
    跡形もないわけだし

    だけど
    貴方に知って欲しいのは

    私に巣食う胸の悪魔が
    いつか
    貴方を苛むことを

    ただ
    貴方に知って欲しかった

    貴方に


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