不酔歌/松本 卓也
 
噛んだ唇から
滲む血の味
鉄と酒と汗が混じり
この上なく不味い

今日も視線が通り過ぎた
降りかかる事の無い声が
目の前で遊んでいる

枯れた涙が頬を伝い
無為な恨み言だけが
今を形成する要素になる

意味が分らない
嘯く言葉の真意
嘆きや怒りでもない
ただひたすらに寂しい

アルコールの力が無ければ
眠りさえ訪れないほど
溜息だけが零れ
愚痴だけが重なる

そんな言葉 聞きたくなかった

問うても 嘆いても
何をもたらす事も無い
悲しみが残るだけ
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