インディアン・サマー/銀猫
黄色の花は枯草に足元を譲り
冬の陽だまりが
影もつくらず
土に隠した春の気配を
内緒で温めている
霜を忘れた僅かな緑は
十二月の大気に身じろぎもせず
去年のうたや
昔むかしの花冠を
夢のように思い出しては
こころにだけ春を着て
恋をする
夢の景色に雪は降らず
遠い菜の花畑のシジミ蝶が
雪舞いを舞う
その、淡やかな舞は
雪よりやさしく
白を纏って
恋の日に咲いた金の花粉を
いずれかの春に運んでゆくのだ
陽だまりに
冬を忘れて
目蓋の内側に
蝶が舞う
願いごと微か
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