エメラルドグリーンの吐息/atsuchan69
 
遠く隔離された蜜月さえ、
 幼けな想いは生きつづけて
  門番の見送るリムジン
   用意された約束の時を
    幾度も見つめなおす
     腕のブレゲ


   (いつの日か
  コンパクトに映った笑み
   慌てふり向いたとき、
    レースの窓掛けは風に揺れて)

   後部ドアより降り立つと
  頬に冷たい降下物

 暗い雪雲がふたたび
聳え立つ銀峰に触れようとしている
 俟ち草臥れた夜を乞う者へ
  冬の光は、白き山々を背に
   悪戯な天使のように小さな声で
    そっと歓びの陽を洩らす

    ――山荘で待つあの人。

  
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