サウダーデ/あおば
海の見えるまっすぐな線路を
新型のレールバスがひた走る
左右に拡がる田圃には若い稲が伸びている
長閑で郷愁を感じる眺めだが
時代錯誤ではないだろうか
こんなに車の普及した現代に
レールバスの必要性は有るのかと
声を殺して冷たく眺めている私がいる
しかし
一両だけでたんたんと走るだけの
レールバスには何の意識もなく
如何なる感情も持ちようが無い
よどみなく180馬力を呻らせる
扇形に展開する運転席の窓からは
白鷺が遊ぶ姿もゆっくりと走っていく
だから遠望することはないのだとも思う
いつものように
ロングシートには帰宅する高校生たち
今日も屈託ない午後の笑いをくれるので
定年の日までは、
まだ少しだけ間があるのだとおもう
作2002/12/24
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