冬鳴/木立 悟
 




光のたびに
滴は昇る
音に昇る
胞(えな)に昇る


肌色をした袖をふり
雲をふちどりゆらめく何か
あとわずかでわかるというのに
午後は土の影を見つめる


光は光になる途中
雨の音を置いてゆく
雲より大きな花がひとつ
雲のうしろで濡れている


地平に沿って立ちならぶ
三つ叉の鉄の向こうの空が
滴をすくい
呑みつづけている


雲から雲へ
駆けるものの香
人のいない
花ある地へ降る


色に生まれて在ることが
けして光ではないように
重なりのなか打ち寄せて
はざまを悼む穂のように


より小さなもののあつまりが
滴のすぎた跡をうたう
瓦礫を照らすひとつの火
花のかたちに原を融かす














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