冬の友達 /服部 剛
 
仕事帰りの夜道 
北風凍(し)みる首筋をマフラーで庇(かば)いながら 
それらが遠くに光っているのを見ると 
何故か吸い寄せられ 
いつのまに 
ペットボトルの並ぶ
窓の前に立っている 

それらは一見無表情に 
窓の内側に整列している 
新鮮な果物の絵
茶の薫る緑の葉の絵 
元気が出そうなコピーの文字 
窓の内側で 
貼られたラベルを蛍光灯に照らされて 
上辺(うわべ)の個性達が「きをつけ」をしている 
 
気がつけばつい  
財布から出した小銭を 
細い投入口に入れてしまう 


「 ちゃりん 」 

「 がたん 」 


液体の 
詰まった重みが落ちる音は心地よく 
腰を屈めて腕を入れ 
ほっとティーを一本 
細長い口の中から取り出す 


( 今日はいつもより働いたなぁ・・・ 


そんなひとり言(ごと)の代わりに 
冷たい両手であたたかい缶を包み 
冬の星空を見上げながら 
白い吐息を 
頭上の夜に昇らせる 




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