お母さんだっても、あいーん/佐野権太
お母さんがぶらんこ
きぃ、とならす
視線を気にして
行儀よく、少しうつむいて
お母さんがぶらんこ
きぃきぃ、ならす
光の匂いに目を細めて
頬に風をあつめて
お母さんが立ち上がる
ぐんっとかかとを押し出す
それは少女のちからで
みどりの弧を描いて
ふくらんで、しぼんで
こんにちは、さようなら
お母さんが中空で静止する
ふわり、あらゆるものから
解き放たれて、バランス
そして、また
ながして、ながされて
ゆるして、ゆるされて
ないて、おかあさん、ないて
あいーん、空に、あいーん
あぶないから、それだけは、おかあさん
さっきの、おばちゃんは
たくの、むすこはって
たしかに、やなかんじ
したけど、ぼくだって
できるから、ちからいっぱい
できるから、こいで
みてて、まけない
だんちの、そらに、こだまする
ぼくたち、の、あいーん
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