落日/ヨルノテガム
うすきみの森へ入ると
なぜ うすきみの森へ来たのか
六つ辻の小道を通ると
左右振り返って 迷子になる
あしたの沢 の水をすくえば
きょうの日付と曜日を忘れる
きのうの小石に蹴つまづく
沢の水は奥歯にしみる
夕日色の血が 赤い実をしぼると光る
林ひとつ向こうで
こどもの騒ぐ声がして
そんな風が止む
ここは、此処は、ここは・・・
木々の造形が踊る人影におもえて、怖くなかった
踊っては なかった
しんしんと足音を消して歩むと、目の前、葉が落ちて
しかし何も始まりは無かった
ただ 森の外に 出た
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