血液奇談/蒸発王
は
献血前に検査して
秘密にお断りしている
その稀が
私の血液
“夕焼け”
太陽が蕩ける
最果てのマグマ
雲や山並み
夜の群青にも
鋭く爪跡を残す
強烈な紅蓮
他人の体に入れば
回りの血を焼き尽くしてしまうので
輸血することはできない
一方
全て焼き尽くし飲み込んでしまうので
どんな血液でも輸血されることは出来る
人のやくには立たない
自分勝手な血液だ
この身に炎が駆け回っているのなら
いっそ
流れ星にでも撃たれて
己が身に焼かれながら死んでしまえたら
少しは綺麗なのに
と
ひっそり思いながら
今日も私は
色とりどりの赤に囲まれている
美しい赤に
『血液奇談』
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