夜想曲/________
歌詞が邪魔だという彼女はクラシックをかけて
キッチンに立つ
クリーム色のソファと橙色のカーテン
長い髪がさらりとこぼれてきたのを少しうつむいて耳にかける癖
その耳にピアスはしない
痛そうだし不潔だから、と彼女は言う
彼の口に入るものだものね、とわたしは思う
ビール駄目だったよね?と彼女は言う
覚えていてくれた、とわたしは思う
お湯が沸騰する優しい音と柔らかい蒸気で
規則的なストリングスの波で
わたしは眠くなってしまって
なんとかしようともぞもぞと窓へ歩み寄り
カーテンを束ねて窓を開けて外を見る
ベランダには大きな大きなサボテンがひとつ
マリ
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