電子レンジのメロディー/________
 
士だった
何年セックスしてなくても
何年無視しあっていても
どうだっていいことだ
わたしたちは生まれてしまった
あの人たちが生んでしまった
それはわたしじゃなくてもよかった

ぶらんこの上でいつも
こんなことを思っていた
ぎいぎいとわたしの代わりにぶらんこが泣いていた
犬は空に鼻を向けて
星の匂いを嗅ごうとしていた
わたしは手も伸ばさなかった


ヒステリックな叫びの断片が聞こえた気がした
振り返ってお母さんの姿を探した
それがわたしの名前を呼ぶときの彼女のやり方だった
おかあさん
おかあさん、おかあさん
どいつもこいつもおかあさんじゃない人間たちを押しのけながら
駅前を早足で歩いて過ぎた
だってだれもわたしの名前を知らないじゃない
もっかい呼んで、呼んでよ
おかあさん




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