鳥は自由に飛ぶ/ダーザイン
 
もれかけた空き瓶の口が 風を受けてびょうびょうと鳴る
カモメはカモメ
カモメよカモメ
籠の中の鳥は いったいいつ出会うのだろう

実習の娘がおばあさんの足の上の砂を払う
ちょっと呆けたおじいさんが そのかたわらで砂をつかみ 埋め戻そうとする
まあ もう砂かけないでと彼女は笑った
帰る時間だから靴はいてバスに乗りましょう

まだ埋めてくれなくていいんだよと おばあさんも笑った

風の強い午後だった
閑散とした海辺
横たわるからだの上を 砂が流れていく
砂浜の砂の上に
打ち上げられた貝殻の曲面に
閉ざされた海の家に
置き忘れられた境界の旗の上に そして
波打ち際にたたずむ人々の上に
飛砂が 一枚の膜を作っていった

鳥は自由に飛ぶ
一本の線によってへだてられた空間を
風つかいのグライダーのように滑空し
大気をはらんだ凧のように静止し
熊蜂のように羽ばたいて流れの外に飛跡を残したりして

そして時には
砂浜の砂の中に
飛ぶ鳥の飛影が
化石していたりする

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