レム/朽木 裕
く冷たい。まるで金属だ。足に反して肢体はとてもあたたかだった。彼女が彼女たる輪郭をゆっくりなぞってみる。
「…どんな夢を見ていたの、」
「…ん。なんでかな…衛生博覧会に二人で連れ立って行く夢。高速道路の8割が水で埋まっていてね、道路がすごく深いの。車は水のなかをざぶざぶ進んで、まわりはカモメでいっぱい。夢のように止まった景色のなかで虹が綺麗に見えてた、」
泣きそうなくらい淋しい顔で滔々と喋った君の 手 が あたたかだった か ら。
彼女の顔が驚愕するくらいの力で身体を抱きしめた。
頭の中で冬空みたいに冷え切った警鐘音が聞こえた気がした。
くらくらする。
強く強く繋ぎとめる。
この世に。
僕の元に。
何処にも行かないで。
どうかどうか。
「…なんて儚い願いだ」
君は苦しそうに僕の腕に僅か抵抗をみせて。
それから額にくちびるに沢山沢山キスをくれた。
「…死んだって一生一緒だよ。どこにもいかないから、」
その後、僕らは飽きもせずにキスを繰り返した。
外は寒い冬の朝。
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