鰯の話と神さんと/六一介
 
空をけずるおとのする 大風のよる
ふたりで二尾百円の鰯をたべる

おさないりーちゃんのいうことには
こんな風 神サンのおうち とばへんやろか

ピンクの箸で鰯の肉を運ぶ
りーちゃんの「神サン」はその手のように 
ちいさくまるく あたたかい

わたしの神は 猫背の七三分けで
しじゅう株価と為替を気にしている

わたしは鰯の骨をとる
家が飛んだら神サン うちにきてもろたらええな という
このあいらしく やわらかいくちびるに
骨のたたぬよう

鰯の肉をりーちゃんの皿に取り分けながら
噛み砕いた肉と骨を むん と呑む

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