春が来た/望月 ゆき
 
春を待っていた

電信柱の脇に
タンポポが顔を出して

庭のハナミズキの枝先に
小さな葉が芽吹き

桜が 今何分咲きだとかって
世間が騒がしくなったり

それでも まだ
春を待っていた

あなたがそれを連れてきた

小高い丘の上から
腕を伸ばしたまま
ごろんごろんと
愉快に転げながら
わたしのもとにたどり着いた
あなたの体のあちこちに
春のカケラがくっついていた

それは 恋か
それは 涙か
あるいは ただの切れ草かもしれない

ただ たしかなことは

あなたが春を連れてきた

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