風を忘れた君へ (Ode to a nerd)/月夜野
 
 思い起こしてはくれまいか
 君とともに生まれ、君とともに在った
 あの風の手触りを
 君が閉ざした扉の外を
 いまなお飄々と吹き渡り
 言葉なき言語で語りかけるものの呼び声を


 蠢く世界の襞々を
 くまなく撫で上げた風の触手は
 いま峡谷の岩棚の上で翼を休めている
 谷を抜けるとそこは
 光輝く海
 ゆったりと息を溜め
 いまひと度の飛翔へ向けて
 君よ
 今夜も深く眠れ




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