紐解かれる/霜天
 
突然の雨に
掌で傘を作ってみたけれど
隙間が多くて
無抵抗に濡れていく私です

傾きかけた夕暮れに
落ちてくる雨は暖かい


いつのまにか
大切なことを忘れてしまったようで
メモをとっておいたのに
その場所さえも忘れてしまったようで

もうあなたは
横顔だけになってしまった


こうやって
少しずつ紐を解かれるみたいに
落としていってしまうのかな

雨に濡れた前髪から
剥がれ落ちていく水滴みたいに


きっとそれは
傾いた夕暮れから落ちてくる水滴が酸性のせいで
私も あなたも 通りすがりの人も
ゆっくりと解けていくんだろう


突然の雨に
掌で傘を作ってみたけれど
意味が無いことを私は知っている

解けていく夕暮れ
私にはぴったりだった
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