飼育係、或いは荒廃/吉田ぐんじょう
 

教室の隅で死んだ
誰かが甲羅をあけようと言ったが
飼育係が泣いて止めた
みどりがめは名前の無いまんま
ごみと一緒に
焼却炉に放り込まれて
終わった


からっぽになった水槽には
ハムスターが入れられた
男子がふざけて踏み殺した
飼い始めてから
三日しか経ってなかった


からっぽになった水槽には

からっぽになった水槽には


飼育係は時折
息を止めてみる
授業中に
休み時間に

魚は酸素を知らぬだろうか
息を止めて一分もすると
空が段々縮んでゆく

死んでいった小さい生き物を
飼育係はそうして悼む

水槽は何時しか忘れ物入れになり
いまは誰かの上履きが
故障したジェット機のように
無造作に突っ込まれている


戻る   Point(15)