呼吸/ねなぎ
走る事を辞めてから
どのくらいが経っただろうか
深く息を止める瞬間にだけ
少しだけ時間を
播き戻せる気がしていた
覚束無い手で
持ち方も知らず
軽くつまんで
取りあえず銜えて
火を付けて見る
考える事を放棄する為に
走っていたように思う
連続した動作を意識もせずに
行える事は反復の
結果だとも思う
火が着かず
どうしたら良いかも
解らずに
肺と喉を騙すように
恐る恐る
口中に吸い込む
痛みは無くなったが必要以上に
時間を持て余してしまうので
感覚に慣れる事で
集中し捕らえる事を
覚えていた
苦味と痛みに
吐き気が
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