空洞軌/木立 悟
錆びた鉄柱が立っている
裂けめは花に覆われている
雲ひとつない空
掴むところのない空
川沿いの砂利道は
小刻みな縦揺れ
見向きもしない水鳥
呼ぶ声に顔を上げると
声はどこかへ飛び去っている
かごの上には砂ぼこり
ふたつの大きな翼の影が
空と川にひらいては消える
少しだけ濃い青のかたち
午後の空気に生まれる水
風の洞を過ぎてゆく
白から先に灰へ 灰から先に銀へ
空の少ない空の下
みんな急いで駆けてゆく
軒先に揺れる人形
雨を見つめる人形
空を横切るものの影と
空を見上げるものの影
貫くようにとどろくはばたき
映すものなくかがやく道
色と姿をはじく道
うつろな風の行方を昇り
鉄の響きを撒いてゆく
花の響きを撒いてゆく
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