それまでのあいだ/渦巻二三五
 
た足を両手に包んであたためてくれたのだっけ
足が冷たいと眠れないから
ゆっくりとよく眠れるように。
わたしはぬくぬくとあたたまって
うっとりと眠くなる
手のなかで
つま先は血を流しながら
痛みはない
けれども止めなくては
血を
ではなくて
ではなくて
ではなくてなんだっけ
浴槽からあふれ出る水
わたしはいつもあふれさせてしまう
だからいけないのだ
止めなくては。
蛇口をひねって水を止める
浴槽の栓を抜いて余分な水を流す
さあ
さあ
さあ
水の音を聞いて
ちょうどよいところで栓をする
息をつめてスイッチを入れる
点火は耳で確かめる
タイマーをセットする
さて
それから
死ぬ前にはなにをすればいいのだろう
そうそう、
床に飛び散ったものを拭わなければ。





          
初出:二〇〇〇年三月二〇日 @nifty 現代詩フォーラム


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