砂時計/明日殻笑子
 
朝おきあがる度に
号令を
強制した
おれそうな体を
黒いブルゾンで
拘束した
かわいいなどと
言われるだけで
この心がまっすぐにこぼれ落ちて行くのです。


生温い視線さえ
敵襲と
思おう
うまれたての脚を
ニーハイブーツで
矯正した
こぼれ落ちてすぐさかさまにもどす
私の証がひとつぶも世界にまぎれてしまわぬように


あぁ
濡れないかわりに乾かない
幾千の砂で窒息しそう


たまりきった感情が
底に
あった
六法の手錠の
合間を縫ってそっとガラスを返した
かわいいと言われるような
生き方をしてもよかったと
さらりさらり
飽和した砂が
行ったりきたり


下向きのものは
上になり
上官の目には
とどかぬように
私の中へと
拘束した
いつかかわいいなどと
言われるだけで
いつでもこの心はまっすぐにこぼれ落ちて行くのです。





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