明治の文章に関する駄文/佐々宝砂
 
筑摩書房版の「明治文学全集」に凝つてゐる。懲性が過ぎて、不図気付くと脳味噌が旧仮名遣ひになつてゐるのであつた。嗚呼美しき哉、旧仮名。

最近借りてきて面白かつたのは「女学雑誌・文学界全集」である。平田禿木の文章(私は禿木が好きだ)を読みたくて借りたのだが、巌本善治の評論が妙だ。をかしいの何の、暫し笑ひ呆けてしまつた。特に面白かつたのは「此の大沙漠界に、一人(いちにん)の詩人あれよ」と云ふ文章である。以下に幾らか引用しておかう。

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(前略)

文学者は下らぬ議論をして無用の討論会を開き小説家はイヤに気取りて重箱の隅迄批評し合ひ、意張る者と詰らぬ奴と怠けるものと死にた
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