木曽路〜ルル・ララ/構造
月日は百代の過客と申されたのはかの芭蕉翁でございますが、
あたりまえのようにその月日はまったくおなじではございません。
いにしえ人はこのことを善く例えられまして、行く河の流れは
絶えずして、しかももとの水にあらずといわれました。
春は桜、夏は柳に秋は楓、冬は雪と申しますように流れる季節は
さまざまをわれわれにみせ、時には暑さ寒さを、時には興を
感じさせながら少しずつ変化していくものでございます。
これは一日一日にもあてはまるものでございますが、われわれも
風流するこころを常に持ちつづけて居るというわけではございません
寒飢にふるえていて雪の美しさを捉えることはできないのと
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