銀の輪/石瀬琳々
 
銀を光らせて
少年は輪をなげいれた
輪は的中した
傍(かたわ)らに立つ年上の少年は
おだやかな黒い眸(め)は
輪をとびこえて
はるかな向こうをみていた
そして
今初めて遇ったように
華奢な少年の顔をみた
年下の少年は
緑がかった青いひとみをしていた
彼はこの眸(め)が好きだった



海のようだと思った
彼は海をみたことはなかった
父も母も神の顔も知らなかった
そこには光があそんでいた
潮騒がうたっていた
時々色を変えながら



クリスマスの夜
少年はいってしまった
あの時 輪をなげいれたように
いともたやすく
かくもあざやかに───
年上の少年は
一度も泣かなかった
ただ 小さく
ハロウ といった
黙って それから
その銀色の輪を
小さな十字架の上に
なげいれた



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