風つかい/白雨パル
 
風をぐっ、と掴んで
わたしの髪が、ふうわりとクールダウン
こころもちが静かにチルアウトする


ついに視界がひらけて
この丘からの風景は、やさしく収斂されて
頼んでもいないのにひどくうつくしいの

わたしは
静まりを、虚ろに睨んでいる


風が、音だけで変わらずに吹いていて
感傷をぬくぬくと加速させている


こんなことだから
若者は数々の風景を、物語をザッピングして
半端に怒ったり、泣いてしまうんだ

こんなことだから
わたしはお腹を鳴らしながら
いつまで経ってもこの丘から動くことができないで
無感動のふりをしていなくてはいけないんだ



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